フレックスタイム=出退勤が自由なだけじゃない

こんにちは。

名古屋丸の内の女性社労士、望月麻里です。

日々、スタートアップ企業様を中心にご支援しています。

その中で最も多いスタートアップ経営者様が思い違いをされているのが、

フレックスタイム制です。

今までご相談いただいた経営者様全員、

フレックスタイム制=出退勤が自由

というだけの認識でした。

労働時間の管理は、通常の原則バージョンで行っており、

フレックスタイム制の管理ではありませんでした。

確かに、世間のフレックスタイム制の認識って、

「いつ出社してもいつ退社してもいいんだ!」

という認識でしかないですよね…

今回は、フレックスタイム制の基本的なルールをご紹介します。

ポイント①:就業規則への記載と、労使協定の締結が必須

「フレックスタイムということは、就業規則と労使協定のご用意がありますか?」

と尋ねると、

「なんですかそれは…普通にフレックスタイムって使えないんですか?」

と、スタートアップ経営者様に聞かれることが100%です。

そうなんです。

フレックスタイムは、

「よし!今日からうちの会社はフレックスタイムでいくぞ!」

と決めるだけでは運用できません。

①就業規則に「始業終業時刻を従業員の決定に委ねること」を書く

②労使協定で、自社の運用内容を定めて従業員と合意する

以上、2つを整え初めてフレックスタイム制が利用できます。

労使協定には、以下の事項を決めて書く必要があります。

①対象となる労働者の範囲

②清算期間

③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)

④標準となる1日の労働時間

⑤コアタイム(任意)

⑥フレキシブルタイムタイム(任意)

ポイント②:時間外労働の取扱が通常と異なる

このポイント②、世間に全く浸透していませんよね…

この説明をするととても驚かれます。

通常の労働時間管理では、

・1日8時間

・1週40時間

を超えたら割増賃金が発生する残業となりますが、フレックスタイム制は違います。

フレックスタイム制では、清算期間における「法定総労働時間の総枠」が決まっていて、

そこを超えたところから割増賃金が発生する残業となります。

通常の労働時間管理では、1日で見て、1週で見て残業時間を集計しますが、

フレックスタイム制ではひと月分の働く時間の総枠が決まっていて、

それをオーバーしたら残業というイメージです。

例えば31日の月の場合、法定労働時間の総枠は177.1時間です。

なので、1日8時間、1週40時間を超える働き方をしていたとしても、

ひと月で見た時に177.1時間を超えていなければ、1日1週で見た残業時間は

残業とはなりません。

最終、177.1時間を超えたか超えないかというラインだけ見るのがフレックスタイム制です。

ポイント③:従業員の自己管理が必須

最後のポイントは、会社だけでなく従業員の自己管理が必要という点です。

フレックスタイム制は、いつ出社しても退社しても良いのが特徴です。

つまり、従業員は労働時間を好きに決められるということです。

反対に、自分で管理しなければ、その月に「会社が働いて欲しいと決めた時間」

を達成することができなかった場合は、欠勤控除となります。

通常の労働時間管理であれば、始業終業、出勤日が決まっているので、

それを守っていれば欠勤となることはほぼありません。

しかし、フレックスタイム制はそういったことは従業員の自由に委ねられるので、

会社が決めたひと月の総枠の時間に達しない場合は、欠勤控除となります。
(※清算期間によって処理は異なります)

フレックスタイム制は、清算期間における総労働時間と実労働時間の過不足に応じて

賃金の支払いはされます。

従業員は自分で労働時間が不足にならないよう、自己管理が必須です。


今回は、スタートアップ経営者様向けに

フレックスタイム制の基本ルールをご紹介しました。

なんとなくでフレックスタイム制を始めている会社様が多く見られます。

導入するためには必須な手続きがあるので、

きちんと整っているか改めて見直しましょう。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。